1998/12/23

電力自由化関連・朝日新聞社説

1998年12月21日 【朝日新聞社説】

「地球環境の視点が欲しい」

 大きな工場やビルに限っての話だが、電気の売買が2000年から自由になる。
 大口の需要家は、今のように地域の電力会社からも、発電事業を始める一般企業か
らも、電気を買えるようになる。
 通産相の諮問機関である電気事業審議会が、そうした内容の制度改革案をまとめ
た。実施のための法案を、通産相が次の国会に提出する予定だ。
 日本の電力業界は、地域独占のぬるま湯に浸かってきた。そのせいもあって、料金
は欧米の先進国に比べて割高である。
 その電力業界に、部分的とはいえ競争が持ち込まれるのは前進だ。
 一般企業が電力会社に電気を卸売りする制度は、既に出来ている。卸売り、小売り
の両面から独占に風穴が空くことは、高コスト構造を改める上で有効だろう。
 問題は、この改革案が地球環境の視点を欠いていることだ。地球環境の保全は、来
世紀最大の課題になっていくだろう。それへの取り組みを伴わないようでは、これか
らの制度として適当とは思えない。
 住宅やビルで電気の使用が伸び続けるのに応じるために、電力会社は原発や石油、
石炭火力を増やしている。
 化石燃料は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量が多い。といっ
て、原発をどんどん増やしていくという国民の合意はない。
 こうした現状を打開する有力な方法は、発電と電力消費の両面に、環境コストを反
映させる仕組みを導入することではないだろうか。たとえば、石油や石炭による発電
に課徴金を課し、その収入を太陽光や風力発電の奨励に回して、そのコストを下げて
いくのである。
 原子力については、将来にわたって放射線を出し続ける廃棄物の管理に必要なコス
トを、きちんと計算することが重要だ。そうすれば、原発が生んだ電気は決して安く
ないことがはっきりするだろう。
 需要面では、電気を効率的に使い、浪費を抑えるための料金制度が必要だ。とりわ
け、需要がピークに達する夏の昼間の料金は、普段の数倍にすべきだ。そうすれば余
計な発電所を作らなくて済む。
 疑問は、改革案自体にもある。 
 競争が活発になるには、送電線が公平に開放されることが必要だ。この利用料が高
かったり、利用条件が身内に有利だったりすれば、一般企業は参入しにくい。
 だから、欧米の国々では、送電部門を切り離して別会社にするとか、管理を中立の
委員会にまかせるとかしている。
 その点、今回の改革案は送電線を電力会社に持たせたままだ。運営に電力会社の裁
量が働く余地が大きい。
 家庭など小口の需要家も含めた、完全な自由化への見通しが示されなかったのも納
得できない。
 完全に自由化したスウェーデンや米国のカリフォルニア州では、消費者が電力会社
を選択できるだけでなく、発電の種類も選べるようになっている。多少高くても風力
発電による電気が欲しい、といった選択が可能なのだ。
 改革案は、業界代表と一部の有識者で構成される審議会で練られた。実質的には、
通産省と業界の協議で作られたと言っても良い。こうした審議会のあり方そのものを
変更しない限り、電力をめぐる抜本的な改革はできないだろう。


電力の息の掛かった?商業紙では,近年希に見るまともな社説である。(時代が変わったのかな?)此れ迄、我々が主張してきている内容に追いついてきている。、問題点も整理されており、よく取材を進めている事が分かる。以前、同じ新聞のある’記者が書いたものとは雲泥の差である。

ただ、未だに生産と消費が別れている事の問題点には踏み込んでいない。ま、この点は別の議論が更に深まれば出てくると思うが、現状での限界であろう。

しかし、何処かの電力会社の社説のような社説を載せた新聞とは大違いである。こうした積み重ねこそがジャーナリズムの使命だろう。