1999/08/17

新エネルギー普及施策の失敗 「破綻した国の補助金政策」
住宅用太陽光発電システムのより一層の普及促進を図るためとして、平成6年度から平成8年度まで「住宅用太陽光発電システムモニター事業」が実施され、更に、平成9年度より太陽光発電システムの本格的普及・市場自立化の基盤を整備することを目的とした「住宅用太陽光発電導入基盤整備事業」が新たに創設されてきた。

平成9年度「住宅用太陽光発電導入基盤整備事業」の応募申込の受付は平成10年3月10日に締め切られたが、その応募状況は以下の通りであった。
 
 

8,329件   




で、この数字を、新エネルギー財団(NEF)は下記の様に総括した。(NEFホームページから
 

年間の応募申込の推移をみると、平成9年度(第1〜3四半期)は4,414件でしたが、平成10年(第4四半期)に入り短期間にもかかわらず3,915件と集中して応募申込がありました。

この理由としては、以下の点が考えられます。

1. 昨年12月に京都で開催された「COP3」に触発され、全国各地で環境に関する会議、セミナーなどが開催されたことにより環境意識が高揚された結果、自然エネルギー、クリーンなエネルギーとしての太陽光発電に対する関心が一段と高まってきたこと。

2. 年度後半に至り太陽電池メーカーの増産体制が整備されたことに加え、各太陽電池メーカーの営業体制の強化、営業の全国展開及び代理店・工務店・特約店ルートの開拓・拡大など、年間を通して実施してきた努力の成果が現れてきたこと。

 3. 当財団としても、3回にわたり全国各地で太陽光発電に関するセミナーを開催し、また、テレビ、新聞、雑誌などの広告媒体を積極的に活用した制度のPRなどの広報活動を行っており、その効果が現れてきたこと。
 

そして、以下がその結果である。NEFホームページから
1.住宅用太陽光発電導入基盤整備事業に係る補助金交付決定件数(実績)及び応募申込件数
 
   応募申込件数又は補助金交付件数(件) 太陽電池出力容量(MW)
平成 9年度 5,654 19.5
平成10年度 8,229 31.8
注:平成10年度住宅用太陽光発電導入基盤整備事業については、平成11年3月10日迄に応募申込を受付た件数


実に興味深い数字が出ている。平成10年度は平成9年度より応募総数では減っている。

さて、以下は平成8年に出された国の 総合エネルギー調査会 基本政策小委員会 中間報告 (H8.12.20) の一節である。
 


<太陽光発電市場自立化のための追加施策>
太陽光発電に対しては、相当規模の国による支援を一定期間に集中的に実施し、量産効果によるコスト低減を通じて、住宅用市場を念頭に置いた早期の市場自立化を促進する。
あわせて、電力会社の時間帯別電灯契約を活用した余剰電力購入制度の周知、同制度の一層の活用、建材一体型太陽光発電システムの実用化等による太陽光発電市場の自立化支援が期待される。
また、2000年度以降の公共施設や工場への導入の本格化をにらみ、コストダウンに向けた標準化のための各種データ収集や新技術の信頼性実証を目的とした導入支援策を行うとともに、本格的普及のための方策の検討及び低コスト化、高効率化等に向けた技術開発を推進する。
以上により、2000年度時点において、導入目標の40万kWを超える導入を実現するとともに、1,000〜2,000億円の新規市場の創出を目指す。 

ここでは太陽光発電の普及目標を西暦2000年度時点で40万kWを超えるとしている。
 
さて、昨年度(1998年度)までに、どれだけ設置されたかを見てみよう。平成9年度19.5MW、平成10年度31.8MWとなっている。さらにその前についてはHPにある数字で平成8年1.9MW、7年3.9MW、6年7.5MWで合計13.3MWとなっている。合計すると64.6MWである。(ま、この目標数値自体が妥当かどうかも問題にしなければならないが・・・)

1MW=1000kWであるから6万4600kW。で、果たして、これから2年で目標達成に残りの34万kWも増えるのだろうか?
 
さらに、問題は、平成10年度の31.8MWと言う数字は試算値である。実はこの前の年度の数字はその応募時は、8329件とむしろ多かったのであるが、実績値では2654件も少ない数字になってしまっている。持ち越したにもかかわらず設置できなかったのである。この事から考えれば昨年度の数字も達成できると言う保証はない。この数字実績値はこの8月の終わりに出るが、前の年より減ることすら考えられる。

ではこの補助金がどうなったのか。持ち越さない前の数字8、329件で、設置完了と報告された数字が5,654件。予算の満額を消化すると言っていたのだから、これは2654件分余った事になる。これは金額で換算すれば凡そ20億円ほどとなる。という事は、結果は未だに出ていないものの、昨年度の補助金は40億円ほどが余る事となる。

これは由々しき問題でなはいのか?(ま、元もとの原資となる電源開発促進税自体が1000億円ほど毎年持ち越されているからどうって事無いと言う人もいるけど・・・)

でも、このままでは目標の達成は出来ない。で、どうしたのか。

設置の条件が緩和されているのだ、すこしづつ。以前は、補助対象の上限は4キロワットだったのが、上限10キロワットに、設置者がそこに住んでいるという事が必要だったのが今ではその条件も無くなった。もう、なりふり構わず補助の対象を広げたのだ。それでも、設置希望者が増えない。

これは一体どう言う事なのか?

ハッキリしているのは、国民がこの補助金制度にそっぽを向いたと言う事だ。国が幾ら言ったところで「損をしてまで国策になんか協力はしないよ」と言う事だ。大体、太陽光発電設備は設置しなくても困る事は無いのだ。だって、必要な電気は電力会社から送られてきているのだから・・・・。

言いかえるなら、これまで国の補助金が出てからでも設置に踏み切ったのは太陽電池に興味の有った物好きと環境オタクだけだったのだ。(先に設置された皆さんを悪く言うつもりは無いけどやっぱり、一般的に見ればそう言う事なんでしょう。実は僕もその一人なんだけど・・・)

大体、変更前の半額補助制度だって当選者が全員設置した訳で無い。出して見て当たったけどやっぱり損をすると言う事で辞退者が大量に出ていたのである。

3年目の繰上げ当選者は3000人にも上ったようだ。(実は私の父がそうであった、繰り上げ当選番号が2700番台であったのに結局その翌年ぎりぎりに繰り上げになったのだ。もう既にその翌年の募集が始まっていたにも関わらず)

という事で、実際の倍率は精々2倍といった所だったのだろう。

それなのに、これをメーカーは見誤った。国のヒアリングに対して「我々は売る力はある。補助額を下げても対象を広げて欲しい」と言ったようである。(これは通産省の担当者から聞いた話である)

メーカーは、一般の消費財を売るのと同じ考え方で太陽光発電設備を売ろうと考えたのだ。大体、これを売りに行った時に消費者が「元が取れるか?」と聞いた時に気がつくべきであったのに・・・。これから彼らがマーケットとして相手にしなければならない相手はどう言う方々かを・・・・。今や、セールスの連中は客の「儲かるのか?」と言う質問に辟易としている。

これは最終消費財ではないのだと言う事に気がつくべきだあったのだ。正しくは、一般の客は「電気代が安くなるか?」「自分が得をするか?」と言う事にしか興味が無いと言う事に気が付くべきだったのだ。誰も「太陽電池を欲しがっているのではないと言う事に気づくべきだったのだ。

経済学的に言うなら「ここから出てくる電気は原材料であって消費財ではなく生産財である」ということで「消費者は生産者としての考え方に転換している」と言う事に気がつくべきだったのだ。

ま、僕が思うに、各メーカーは先行設置者に安くなったその差額を払い戻すという約束でもしたらみんな買うんじゃないかと思うね。大抵の設置者がそのメーカーの製品を宣伝してくれているわけだし・・・、でも、そう言う方策を採ったメーカと言うのは寡聞にして聞いた事が無い。

で、結果はどうなったか?誰も買わない・・・。この不況が追い討ちを掛けた事実は有るが、待っていれば安くなると分かっているものに誰が金を払うか?いくら、メーカーや通産の役人が上手言っても、誰がそんな高い買い物をするものか!

でもね、もっとおかしいのは、このマーケットは有望だと一時、この業界から姿を消していた原発メーカーの三菱までが再度、参入してきているということだ。現状では、将来を当て込んで各社とも、生産設備を大幅に増やしているから生産余力はある。しかし、標準家庭用の3kWシステムを100万円とかには出来ないだろう。かと言ってこれで儲かっているメーカーは無い、赤字を出しているのが現状なのだ。

では、一体何処が儲けているのか?それは未来の人達だと言う事は誰もが知っているけど・・・。

一見、得をしていないように見える電力会社が最も得をしているのだ。

実は、最近の電力自由化の流れの中で原発推進と言う大馬鹿な経営戦略を取ってきて世界一高い電気料金に胡座をかいて我が世を謳歌していた電力会社は、今、その不良資産となる電力需要に対応できない?安定供給と言う融通の利かない発電設備の為と日本の特異な?夏のピーク電力への対応の為に稼働率の低い発電所=不良資産をかかえこんでしまっているのだ。

東京電力の試算ではピーク対応の揚水発電所の発電原価は10パーセントの稼働率で33,4円。関西電力の火力発電所のピーク対応発電原価は試算値で33,1円ほどである。
 
ピークさえなければ・・・・。   このピーク電力に対応するのが太陽光発電である。

そう、消費者の負担で、つまり電力会社の自己負担無しでピークカットが出来ているのだ。何のリスクも負わずに電力会社は忌まわしいピークカットが出来ているのだ。なのに、彼らは「余った電気を買ってあげます」といっているのだ。メーカーのセールスマンも「余った電気を買ってもらえます」と言うセールストークを繰り返している。

「何できれいな電気を彼らの喉から手が出るほど欲しいときに安く売らなきゃ行けないの?」と原価150円ほどの電気を21円で電力に売っている僕はそう思うのだ。

ならば、このピークに対応する価格での買い取りは電力会社の責任であると言って良い。それはマーケットメカニズムに対応してもそうであろう。彼らが損をする事も無いのだ。

消費者にとっての適正な価格と言うのは先行投資をしても損をしないと言う事なのだ。標準的なシステムで自己負担額が200万円以下になると言うのは2次的な事だ。幾ら高くても損をしないなら絶対に買う!それは借金をしても買う!

一体、この国の中で誰が他人の犠牲になってまで良い事をしましょうなんて事に協力をするものか。特にそれが信用の置けない国がすすめる事に置いて・・・。まだ、箪笥預金の方がよっぽどマシな選択だと多くの人は思っているのだ。

この太陽光発電の市場を立ち上げる為には、おかしな話だが、実に、おかしな事だが、再度、補助金の金額を増やすしかないだろう。しかし、これとて、電力会社との売買電価格が下がれば問題が出てくる事は目に見えている。実際、今年の補助金は昨年よりも条件が良いとなっている。NEFの出しているパンフレットにもどうどうとそう書かれているのだ。公平さをかなぐり捨てても予算を執行して、太陽光発電の普及に役に立ったと言うつもりだろうか?
 
さらに、普及策として検討されているのは税金の減免とか言う事らしい。しかし、これも先行投資者はその対象ともならないかもしれない。こうした不公平、不公正を正す事が出来ないと言うのは自分たちの無能を晒しているようなものである。

この状況を抜本的に解決するには、我々が主張している先行投資者が損をしないレートインセンティブによる新しい支援策を作る以外に無いだろう。これが、最も現時点では理想的な枠組みである事は明らかである。(これを日本に導入するためには現状ではどうすれば良いかはこのHPのほかのファイルに書かれているのでそれを参照されたい)
 
 

バーチャル・シンクタンク「未来プランニング」代表 中川修治

追記 

このレートインセンティブ方式に関しては国内では実行例が無いと言う事なので、市民共同発電所設置プロジェクトがその実例を今回新たに実行に移される新プロジェクトに伴い実行に移す事とする。
1999/08/23  補足:
関係者から聞いた話によれば、「平成9年度の未執行分に関しては国庫に返還された」との事です。さらに、「平成10年度分に関しては8229件では予算の総額に達しなかった事から翌11年度の予算に繰越をしている。昨年度の予算自体は来年の3月まで持ち越しているので結果は来年3月でに出る」と言う事である。つまり、本年度当初の予算160億円に加えて約40億円が今年の太陽光発電の予算として計上されていて、その結果は来年3月にならないと出ないという事になる。

今年の応募状況は昨年度よりは良いらしい。その理由は、景気の回復によって住宅着工件数が増え、屋根材として供給されるようになった太陽光発電が普及し始めていると言う事があるからだ。しかし、200億円の予算が総て使われるかどうかは定かではない。

 しかし、上で指摘した問題点は何ら解決していない事は、賢明な読者の方々にはわかって頂けると思う。
 

1999/08/27   シャープ新庄工場にて 富田氏

「昨年に比べて屋根材として出荷しているものの伸びの比率は180パーセントです。これだけ、大きなものになってくると責任が生じる」
1999/09/09

確かに上記の理由により、太陽光発電自体の普及は進んでいるが、先行投資をした人達が損をしながらきれいな電気を社会に供給している事実は変わらない。本質的な問題の解決には繋がっていない。これは見過ごしてはならない点である。