★ 原子力発電のしくみ(1)

原子力発電(略して原発)。何やら難しく、高度な技術のようで取りつきにくいというのが一般的な印象だろう。しかし、私たち一人一人がその極めて専門的な事柄まで理解する必要は全くない。難しいことは専門家にまかせてしまおう。従って当講座では、「原発のしくみ」について基本的なことだけを説明する。さらに詳しく知りたい人は末尾に挙げた文献を参照して欲しい。

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、原発の基本的な原理、 

●火力発電と比較すると

火力発電は石炭や石油を燃やして蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回し発電する。では原発はというと、前半の蒸気を作るための熱源−つまり、石炭や石油に相当する部分−が、原子力あるいは核燃料というだけで、発電のための大まかなしくみとしては特別複雑なものではない。


では、どうして原発は特別扱いされているのだろうか。それは熱を発すると同時に、いわゆる「死の灰」を大量に生み出すからに他ならない。これを環境に漏らさないためのしくみが大変大がかりであり、かつ極めて高度な技術を要するのである。       

●熱の発生「「核分裂 

一般的な原発(後述の軽水炉)の燃料は濃縮ウラン(注1)と言われるもので、これに中性子(注2)をぶつけると、このウランが割れる(核分裂)と同時にものすごい熱を発生する。この熱で水を沸騰させて蒸気をつくる訳だ。                                       

(注1)ウランとひと口に言っても実は何人かの兄弟がおり、ある数字を付けて区別して いる。原発で中心となるのはウラン235とウラン238で、核分裂をするのはウラン235である。鉱山から掘り出される天然ウランには、このウラン235が0.7%しか含まれておらず(残りはウラン238)、このままでは効率よく核分裂させることが難しい。そのためにある操作を加えて、ウラン235の比率を3〜4%に高めた(これを濃縮という)ものを燃料として使っている。ただし、天然ウランをそのまま使う原発もある。

(注2)物質を構成する粒子のひとつ。全ての物質は原子というものから成り立っている。さらにこの原子を構成しているのが電子、陽子そして中性子である。        

また、ウランが分裂して別の物質が新たにできるが、これを「核分裂生成物」あるいは「死の灰」という。たとえばヨウ素131やセシウム137がそれである。100万KWの原発を一年間運転すると、広島に落とされた原爆がまき散らした死の灰の約1000倍の量が生み出されることになる。

ちなみにウラン235が核分裂している時にウラン238はどうしているかというと、中性子を吸収して一部プルトニウムに変化している。このプルトニウムを改めて原発や高速増殖炉で使うために取り出す操作が「再処理」である。

●核分裂のコントロール

核分裂を効率よく起こし、かつ暴走(つまり原爆)させないための工夫が原発には必要となる。それが「減速材」と「制御棒」である。                 




減速材とは読んで字の通り、中性子の速度を減じるためのもので、最もよく使われるものが「普通の水」(軽水という)である。何故このようなものが必要かというと、中性子をそのまま使うとスピードが速すぎて核分裂が起こりにくいためである。たとえるなら、ゴルフのパットを思い浮べて欲しい。余り強くボールを叩くとカップに蹴られて跳ね上がってしまうが、適度な強さ(速さ)ならうまくカップインさせることができよう。イメージとしてはこれと同じことが核分裂にも言える訳だ。           
 参考までに言うと、チェルノブイリ原発は減速材として黒鉛を使用、また今問題になっている高速増殖炉「もんじゅ」では、中性子をそのままのスピードで使うため減速材はない。                                   

また、日本で主流になっている原発(軽水炉)では、この減速材が同時に冷却材−炉心の熱を運ぶ−の役目も果たしていることを付け加えておく。

次に制御棒の働きとしては、余分な中性子を吸収することにある。ウラン1個の核分裂に際し、2〜3個の中性子が新たに飛び出す。これらが全部次の核分裂に寄与すれば、次々とネズミ算式に核分裂が起こり(連鎖反応)、遂には爆発してしまう。つまり、これが原爆である。原発ではこうならないために余分な中性子を制御棒で吸収し、常に一個の中性子しか次の核分裂を起こさないようにコントロールしているのである。   

「「「原子力発電のしくみA」に続く 

◆参考文献 「原子力発電 知る 考える 調べる」 日本科学者会議編 合同出版
      「原子力発電」           武谷 三男編    岩波新書
      「反原発出前します 高木仁三郎講義録」        七つ森書館
      「高速増殖炉もんじゅ 巨大核技術の夢と現実」 小林 圭二著 七つ森書館  

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