★ 原発と地震(2)


●1月17日に起きた阪神・淡路大震災。「これは本当に今、この日本で起こっていることなのか…」と誰もが思ったに違いない。そして同時に「もし原発をこんな大地震が襲ったらどうなるのだろう」という不安を多くの人が持ったことだろう。ましてや目の前に原発が立っている地元の人々にとっては、より具体的な恐怖の対象となったはずである。…鉄道はもちろん、道路は寸断され逃げ道は断たれる。救援隊も来られない。周囲には目に見えない放射能が漂う。ライフラインは破壊され、除染もできない。ボランティアなど望むべくもない。時間が経っても汚染のため復興はままならず、土地を放棄しなくてはならなくなるだろう。果たして安全な所に避難できるのだろうか…

●「豆腐の上の原発」(東京電力柏崎刈羽原発)、「ナマズの上の原発」(中部電力浜岡原発)という言葉に象徴される、地震大国日本の原発群。阪神大震災の後でも国や電力会社は「大丈夫」と強弁している。

---原子力発電所を造るには、活動可能性のある活断層はないか、過去に大地震は起きたか、近辺で直下型地震が発生する可能性があるかなどを調べて設計します。原発の耐震基準は平均三百数十ガルですが、それは岩盤上でのこと。地震の揺れは地表では3倍になりますから、1000ガルに相当する訳です。400ガル以上が震度7ですから(阪神大震災級でも)大丈夫と言えます。(通産省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全企画審査課長藤富氏のコメント95年2月22日中日新聞)
藤富氏は知らないのだろうか。原発の立地は土地買収が先で活断層などの調査は後回しであり、何も活断層がない所を選んでいる訳ではないことを。また、地表面の揺れが岩盤の3倍という根拠はあるのだろうか。岩盤が崩壊することはないのだろうか。実験もしていないのに震度7でも大丈夫とどうして言えるのだろうか。国も電力会社も「大丈夫」というお題目を唱えるだけで、こういった疑問には全く答えようとしない。
今回の大震災の被害を考える時、51基もの原発と10を越える核関連施設をかかえる日本に生きているということに恐怖心を抱くのは私だけではないはずだ。

●では改めて、新聞等に公表された資料をもとに原発の耐震性について検証してみたい。
【図1】は全国の各原発の耐震設計値(水平動)と今回の阪神大震災での揺れを比較したものである。阪神大震災の揺れは地表面で最大818ガル(水平)であったが、国や電力会社が主張するように岩盤上の揺れはその1/2から1/3として、400〜300ガルという値を用いた。まず図中AS、Aで示した原発の耐震分類について説明しておこう。右上【表1】を見ていただきたい。原発施設はその全てが高度の耐震設計で建設されている訳ではない。放射能の放出を防ぐという観点から、重要度ごとにAS、A、B、Cの4クラスに分けられ、それぞれ耐震基準が異なっている。このような分類を設けたのは本来ならば全部ASクラスにすべきだが、そうすると建設コストが膨大なものになってしまうからという経済的理由による。つまり安全切り捨て=利益優先の思想である。原発という超危険な施設内でこのように耐震設計のバラツキがあるということは非常に重大な問題を孕んでいるが、この点は後述する。では【図1】に戻ろう。

阪神大震災はほとんど全ての原発の耐震基準を越える
図を見てわかるようにAS、A クラスとも阪神大震災の揺れ400 ガルを上回ったのは原電東海、中部浜岡3・4のわずか3基に過ぎない。しかし、例えば敦賀2のASクラスの設計値は500ガルを越えており(532ガル)、安心できるように思えるが、実はそうではない。この532ガルという値は瞬間的な一回限りの最高値であって、実質的には375ガル程度である(このことは他の原発にも言えるだろう)。阪神大震災の揺れは約20秒間続いており、従って瞬間的な揺れを云々しても何の保証にもならない。
電力会社は「耐震性を独自に調査して安全を確認した」とコメント、但し調査データについては「企業秘密」としている。また資源エネルギー庁と科学技術庁は「各電力会社が阪神大震災級の地震を想定して、安全を確認しているようだ」(傍点筆者)と話している(同毎日新聞)。ここまで言い切るのなら、根拠となるデータを公開し、国民が納得できるようにきちんと説明すべきあろう。

原子炉容器(AS)が無事でも、配管が破れ緊急炉心冷却装置(A)が作動しなければ大惨事百歩譲って原子炉容器や格納容器は岩盤上に建設され、さらにASクラスの耐震設計だから「大丈夫」としよう。ところがこのことは裏を返せば、Aクラス以下の機器は壊れてしまう可能性があるということなのだ。地表面に建てられ、1000ガルの揺れに襲われるタービンと岩盤上に据え付けられた原子炉を結ぶ配管が無事でいられるとはとても考えられない。配管が破断し、緊急炉心冷却装置も壊れてしまえば冷却水喪失、そして炉心溶融。外部から電気を送る送電系統が破壊されれば外部電源喪失、炉心冷却不能、そして同じく炉心溶融。タービンが破壊されれば、その巨大な金属性の羽根がミサイルとなって格納容器や配管などを破壊することもあり得るのだ(タービンミサイルという)。いくら原子炉の中心部を強化してところで、周辺に亀裂が入れば結局共倒れになってしまうのである。
国も電力会社もこの共倒れ事故はあり得ないとして、全く評価していない(その膨大な数の事故の可能性と深刻さから、原発の推進ができなくなることを恐れているのである)。

●このように原発の耐震性に重大な疑義が生じている現在、原発を停止させる以外に根本的な解決方法はない。巨大地震が起こってからでは遅いのである。

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