★ 地球温暖化と原発


「原発はウランの核分裂を利用しているので、火力発電所と違って温暖化の原因となる二酸化炭素を出さない。だから原発を推進しよう。」

「そうだ! その通りだ!」 「ンッ?!」

では結論を先に言ってしまおう。『原発は二酸化炭素を減らすどころか、増やすことにもなり得る。また、温排水によって直接的な熱汚染(=温暖化)をもたらしている可能性がある。』

冒頭のような原発を正当化するための詐欺的誇大広告は、何も今に始まったことではない。70年代には、あの「石油代替説」が盛んに流布され、つい最近まで大半の人々をだますことに成功していた(一部では今も尚生きている)。しかし、原発が「石油の缶詰」でしかないことが明らかとなり、この説が今や使えなくなってしまった。そこにちょうどタイミングよく現われたのが、80年代後半の地球温暖化問題であり、フロンによるオゾン層破壊などと共にクローズアップされ、人々の注目を集めるようになった。そこで、ここぞとばかりに考えだされたのが、「原発のクリーンエネルギー説(=二酸化炭素を出さない)」なのだ。

今回は、この詐欺的宣伝を批判してみたい。

●地球温暖化とは 

局地的な干ばつや大雨、世界的な暖冬などの異常気象が重大な問題となっている。これらの異常気象をもたらす大きな要因として、地球の平均気温が上昇してきていることが指摘されている。

上のグラフは、ここ100年余りの地球の平均気温の偏差を見たものである。全体の流れとして、プラスに偏ってきており、特に70年代から鋭い上昇傾向を見せていることが読み取れる。これが、現在問題にされている温暖化現象である。
しかし、60年代にはむしろ下降傾向を示し、当時は“世界は寒冷化に向かう”と主張されていた。気象というグローバルな現象の長期予測には、こうした不確かさがどうしてもつきまとう。だから現在の温暖化が、ある時点でまた寒冷化に転じる可能性も否定できない訳だ。しかし、だからと言って楽観視してよいというものでは決してない。

●温暖化の原因

 今回注目しているのは、いわゆる温室効果をもたらす様々な気体−その中でも二酸化炭素である。しかし、温暖化の原因はこればかりではない。酸性雨や伐採による森林破壊や海洋汚染、砂漠化現象などの要因も複雑に絡んでいることにも注意が必要である。

温室効果の原因となるガスにも、二酸化炭素の他に次のようなものがある。

・メタン…身近なところでは、ドブや沼地などからブクブクと出ているガスである。
     同じ体積ならば二酸化炭素より強い温室効果を持つ。現在、大気中の濃度
     は二酸化炭素の200分の1程度であるが、増加率は二酸化炭素より大きい。

・フロンガス…フロンはオゾン層破壊だけでなく、二酸化炭素より大きな温室効果を
      もたらすガスとしても重要である。

・亜酸化窒素…土壌の窒素の嫌気性発酵などによって発生する。他のガス同様温室効
       果が大きい。

これらのガスの温室効果への寄与は、二酸化炭素50%、他50%となっている。しかし、今後2000年代にかけては、二酸化炭素以外のガスの役割が大きくなると予測されている。

●二酸化炭素の発生源

さて問題の二酸化炭素だが、一体どこから発生しているのだろうか。
               

上図は、日本で発生する二酸化炭素の割合を産業別に示したものである。これからわかることは、電力(火力発電所)からの二酸化炭素は約30%であり、大きいことは大きいが、決定的な要因ではないということだ(だからと言って火力発電所をどんどん増やしてもよいとはならない)。二酸化炭素問題は輸送、産業構造全般の問題なのだ。

●原発で二酸化炭素は減らせない

発生する二酸化炭素の内、火力発電所が占める30%の半分、15%を原発で置き換えたとしよう。このためには今の日本の原発の設備量を2倍にする必要がある。そんな極端な原発建設は不可能であるが、敢えてそう仮定してみよう。

 地球温暖化をもたらす温室効果ガスの内、二酸化炭素の寄与率は50%である。さらにこの内火力発電所の分30%の2分の1、15%を原発でということであるから;

  0.5(50%)×0.15(15%)=0.075(7.5%)

      つまり期待される効果としては7.5%となる。

 現在の原発を倍増するという不可能な仮定の上でも、この程度しか望めないということだ。しかもこの計算では、原発の建設、核燃料の製造、放射性廃棄物の処理、廃炉などに要するエネルギー、その結果として排出される二酸化炭素などの要素は全く考慮されていない。これらを入れれば、大きくマイナスに割り込んでしまうのではないか。実際、アメリカのロッキー・マウンテン研究所の調査研究によれば、「今後40年間にわたって、3日に1基の割合で原発を建設し続けても二酸化炭素の増加を防ぐことはできない」と結論づけられている(1988年)。

●原発こそが環境破壊の元凶

原発は火力発電所などに比べて効率が悪く、原子炉で発生する熱の内3分の1が電力に、残り3分の2は排熱として環境に捨てられている。この排熱が、直接的に地球温暖化に寄与しているとは言えないが、都市部のヒートアイランド現象の例からもわかるように、周辺地域に何らかの影響を与えていることは間違いないだろう。

また原発は、事故時はもちろんだが、日常的にも放射能を放出しており、大気や海を汚染しているのである。

●問われるべきは今の社会構造−そのために脱原発を

地球環境破壊の原因は、全て我々人類の側にある。例えば、日本の全消費エネルギーだけで、一年間に降り注ぐ太陽エネルギーの0.2%を越える。地球上の風や対流を引き起こす元になるとされるこの0.2%ラインを越えたことが、近年の異常気象をもたらしているとすれば、これは起こるべくして起こったと言わざるを得ない。従って対処方法はひとつ、エネルギー大量消費文明の見直ししかない。原発は、大量消費を前提とし、省エネに逆行する最たるものである。脱原発を目指して、一人一人がいかに行動するかが問われている。


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