1999/09/24

原子力政策円卓会議参加者の意見

下記のファイルは国がもんじゅの事故以降に始めた原子力政策円卓会議のうち、今年(1999年8月23日)第3回の会議(議事録はここ)に一般の参加者として応募して参加された中田真佐美さんが資料として提出したものです。ご本人の承諾を得てここに掲載します。これに関してのご意見等がありましたら、ご本ににに直接メールを出して頂いても結構だと言う事です。メールアドレスはmasamin@socrates.berkeley.eduです。



 
「今後の原子力のあり方について」                   中田真佐美

原子力エネルギーは使わなくて済むのであれば使いたくないのが大半の国民の気持ちだと思う。それにもかかわらず、エネルギーの確保や地球温暖化に対する対策として日本が原子力を選択するのであれば、他の先進国が原子力を捨てている以上、もっと明らか理由と情報を提示するか、あるいは過剰な保護政策を取り除き規制緩和をすすめて電力市場を開放し、原子力を他のエネルギー選択肢と公平に比べられる機構の導入が必要であると思う。いくつかの理由を下記に述べる。

原子力発電にかかる費用

電気会社が地域独占構造をもち、いくら費用をかけて商売をしても必ず利益を保証されている現在の電気料金構造では、原子力発電の値段が正当に評価され得ない。さらに、原子力発電の値段が妥当であるかどうかと消費者が判断する十分な情報も基準もない。原子力の本当の値段がわからない状況で、原子力というものが、国民がどこまで犠牲を払って保持すべきものかどう判断すればいいのか。

欧米では、電力市場の自由化により原子力の本当の値段は実は膨大であることを消費者がはじめて知らされた。去年4月に電力市場が自由化されたカリフォルニア州では、電力会社の原子力発電等への未回収投資$28billion(約3兆円)を消費者が払う事になり、米国全土では$200billion以上とも言われている。[1]原子力発電にともなう投資が高額に過ぎるため、米国では既に73年から新しい発電所の注文がとまっているし、フランスのEDFでさえ、近年始まった古い原子力発電所の解体にかかる費用が膨大であることから、原子力発電を減らす計画があり、日本を除くすべてのOECDの国で原子力推進をやめている 。

 では、日本での原子力発電はなぜ安いといわれているのか。既存の発電所で発電をする場合のマージナルコストは安いということだが、新発電所での発電、廃棄物処理費、解体費、災害保険、研究費など化石燃料による発電と比べて費用がかかるであろうものがたくさんある。安く見積もり過ぎてはいないか。例えば、日本の原子力業界は1984年に解体費を$0.2/Weと見積もっているが、米国のシッピングポート原子力発電所の実際の解体費用はは$1.23/Weであり、少なくとも日本の見積りの6倍かかっている。日本の原子力関連の研究には一年に約5000億円が費やされ、これは米国の全エネルギー関連研究費よりも多い。[2]

エネルギー消費予測

21世紀のエネルギー消費は20世紀の高度成長期とは違いかなりの不確定要素をもっている。ガス発電に比べて原子力発電はその変化に対応するflexibilityがあるのか。はっきりいって現在の状況であと20基の原子力発電所を建設する事は不可能に近いと思うが、もし立たない場合どのようにエネルギー消費をおぎなうのか。手に入らない可能性のあるエネルギーに日本の将来を託してよいのか。もっと確実なエネルギー源確保に力をいれるべきではないのか。さらに、万が一20基立った場合でも、もし予測に反してエネルギー消費が減ったらベースロードにしかならない原子力はそっくり国の荷物になってしまうが、そうなった場合にどうするのか。

規制緩和

規制緩和はしてもしなくてもいいわけではなく、世界的な経済変化の流れであるから、日本だけが世界中の国からの非難を受けても電力市場を開放しないということができのか。さらに電力市場を開放しないことは、日本の電力産業、原子力産業の国際競争力低下につながるのだから、電力会社も消費者も規制緩和は近い将来起こるものと考えるべきではないか。本当に原子力発電が経済的であるのなら、電力自由化が原子力発電に有利に働く可能性はある。電力業界および原子力産業の運営が高効率化された結果発電費用が安くなり市場競争力がつくし、事故やその隠匿が公になると多大な費用がかかるうえに、信頼を失って破産に追い込まれることが明らかなのだから、安全性向上と情報公開をすすめるかもしれない。もし地球温暖化防止のために炭素税等が導入されれば、原子力は化石燃料よりも経済的に有利になる。原子力発電に関する経済性、安全性等に関する情報が正しければ、ある程度の電力自由化が進められても原子力がなくなることにはならないはずである。

他の選択肢

    IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) Reportにもあるように、他の発電技術 選択肢はたくさんある。温暖化に真剣に取り組んでいるEU(ヨーロッパ連合)は、電力市場を開放した結果原子力以外の選択肢を選び、石油の半分以下の炭素排出量であるコンバインドサイクルをもつガス発電所への切り替えを進め、さらに2010年までに 12パーセント程度の再生可能エネルギーの導入を決めている。アメリカでもRPS(Renewable Portfolio Standard 再生可能エネルギー導入目標) の議論  がすめられている。

日本でも、再生可能エネルギーでは日本経済を支えられない、原子力発電しか選択肢はないなどの情報を押しつけるよりも、もっと情報を与え、国民がエネルギーを公平に比較出来る状態が必要であると思う。金融業界や住専の経営破綻が結局国民の負担になったように、専門家と国に押しつけられた選択に従った結果、原子力にかけられた経済的負担がまた消費者に課かせられる事は避けてほしい。

1. Public Utilities Fortnightly, Mar 15, 135(6): 10-11 1997.
2. Decommissioning of nuclear facilities NEA OECD 1991.


そして、この後、2ヶ月も経たないうちに東海村のJCOの核臨界事故が起こった。32万人もの人の生活が規制された。危機管理とか安全規制とかいろいろ言われるが、そもそも核と言うものを使うから起こるのであって別の方法でも電気は起こせるのだ。それを恰も原子力しか選択肢の無いように洗脳する事自体が問題なのだ。



1999/10/11
 
この後、中田さんから頂いた感想です。

ついに臨界事故起きましたね。

(日本の原子力はどんどん高価になりますね。環境だの放射性廃棄物がどうかよりも経済的理由(政府がどれだけお金をかける気があるのか)が原子力政策を決めると、あいかわらず思っています。)

地元への補助金が上がるだろうし、今回の事故が茨城県の産業に与えた被害の補償を全部国が出すとしたら、(JCO? JOC?が出すわけないでしょ。事故の為の保険にだって入ってないでしょうし)、またきっとすごい負担ですね。観光地だの、農作物だの、所沢のダイオキシンどころではないでしょう。今のままでは、洪水で水位がどんどん上がる川(国民の反対や経済的負担)の堤防を一生懸命に高くしているようなものですから、堤防が決壊(経済的に破綻する)する前に、水位を下げる手段(別のエネルギー資源の確保)をはからないと困ると思います。次の台風(規制緩和、臨界事故)がやってきたら一気に堤防決壊です。そうすると、選択肢としては省エネ、再生可能エネルギー、ナチュラルガスでしょうね。再生可能エネルギーは政策が、ナチュラルガスは確保と値段が決め手でしょうか。

中田

原子力防災保険は、報道に寄れば少しは出る様です。でも、それで被害は本当に補償できるのでしょうか?風評被害。失われた時間。ばら撒かれた中性子による健康被害は?可哀相にあの核臨界を止めるために決死隊となって行った人達の健康被害が心配です。お金では買えないのが健康です。お金貰っても癌になったらしょうがないでしょうにね。