1999/02/02 筆者の了解を得てウェッブ上に公開


 
 「規制緩和と電力協同組合」
 
                 クリーンエネルギーフォラム 瀧田隆夫  
  電力事業の規制緩和

 新聞報道によれば、小渕首相は電力事業の規制緩和について「小口需要の自由化に向けたスケジュールを明示すべきだ」と主張していると報じている。これはどういう意味かといえば・日本でもこの数年電力事業の自由化は急速に進んだ。九五年の電気事業法の改正では一般企業が発電して電力会社社に販売することができるようになった。これが電力事業の規制緩和すなわち自由化の第一段階であった。ついで今年六月の通産大臣の諮問機関電気事業審議会では発電のみでなく大口需要者すなわち事業所や工場に販売できるような答申がなされた。これによりさらに法改正がなされ、自由化がさらに拡大されることとなった。だが小口すなわち一般家庭への販売の自由化は先送りされることとなった。それについて、電気事業審議会の基本政策部会で主婦連の中村紀伊参与は「小口の自由化をどう進めるか。私どもは非常に関心がある」と表明した。こうして電気事業の自由化は一般家庭の電気料金にも及びそうである。
 
    こうした電力事業の大口の自由化はサービスを含めた国内産業の国際競争力の一要因となるため、小口より優先的に進行した。今でも大口と小口ではキロワット時当たりの単価は十六円と二五円(消費税含めると二六円)と九円の差がある。大口のみ自由化されるとその差はもっと大きくなる。電力会社としては自由化による利益の損失を一方的に価格を決定できる小口価格に転嫁しさらに価格差が拡大することが予想される。すなわち大口の自由化の結果が一般家庭の電気料にしわ寄せされることになる。これを心配したのが冒頭の首相発言であり中村参与発言である。すでにアメリカの一部の州やドイツでは全てが自由化されイギリスでも本年十二月に自由化に踏み切ると報じられている。今後若干の変遷はあろうが我が国でも小口の自由化はさけられないであろう。何故電気事業の規制緩和を取り上げたかといえば、これは筆者が本誌で最初に提示した電力協同組合の実現にふかくかかわるからである。小口の規制が撤廃されれば、電気の小売りが可能となり、ドイツなどで試みられているクリーンエネルギー源による電気の購入すなわち、グリーン購買も可能となる。むろん電力協同組合も可能となり、消費者は協同により風力発電による電気を安く利用できるのが可能となる。

  協同組合による電力事業

戦前の産業組合は電力事業を実施していた。その頃は産業組合といったがその利用事業としてである。戦前産業組合中央会京都支会に籍をおいたことのある鈴木佐一郎所蔵の「京都産業組合史」の年表によると大正八年京都市に電燈購買組合が京都市にできる。戦前の市であるから純粋の市街地と思われる。当時は電力源は水力であるから発電所は市外である。その上購買組合であるから、電力会社より電力を購入し組合員に供給したものとおもわれる。そのころ京都電燈会社というものが存在したから仕入れはそこからであろう。この会社は昭和二年に儲かったお礼に最初の比叡山ケーブルを建設し京都市民が比叡山にゆく便宜を計ったという。この組合は四年で解散するがおそらくこの会社に吸収されたのであろう。
 
  長く継続したのは電気利用組合である。大正十三年に郡部に四ケ谷電気利用組合ができる。昭和にはいると九年までに戸津川電気利用組合以下九年までに八ケ所に電気利用組合ができる。だが十三年以降は逆に解散が続く。

 どうして解散していくのは年表なので触れられていない。結局時代背景より推測してゆかねばならない。昭和十三年といえば日中戦争も泥沼化し、戦時経済が進行した。電力産業は軍需産業の基礎であり、民需は抑制され統制が強化された。電気利用組合の電気は当然民需である。その軍需への転用が必要となる。それが本州の電力会社の東と西に分割し二大会社に統合した。前後して産業組合も帝国農会と衣替えして協同組合でなくなり、戦争遂行の農業統制団体となった。ここで電力協同組合は消滅した。戦後産業組合は農業協同組合、水産業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合として復活するが、産業組合の電気利用組合は協同組合として復活することはなかった。
 
  その大きな理由は水力を主として電力産業は自然的性格と産業復興の重大な担い手として國の統制が継続しやすい独占的事業にしたのであろう。この独占は戦後制定された独占禁止法でも一条文として二十一場で適用除外が明記されていた。

  風力発電の展開

最初に日本における風力発電の建設状況を新エネルギー財団の「風力発電システム導入促進の手引き(平成十年度版)」の資料を紹介しておこう。本年七月末現在で台数にして九九台、二万四千キロワットに過ぎない。諸外国比較したら問題にならないのは、本誌九六年十月号で紹介した状況と大差はないが、年度別にみると「単年度導入規模・累積導入入規模」で図示するように 九五年以降増加の兆しがでてきている。最初に手がけたのは民間の三菱重工業長崎造船所で、商業化試験のため造船所内に二五0キロワットで設置した。通産省も八七年に試験研究のため設置するが出力は一五キロワットに過ぎるかった。地方自治体が実用的に着手するのは愛媛県の瀬戸町で九十年に農業公園用で、電力を売る賣電は九三年の松任市と立川町でいずれも公園用からの転換であった。電力に余剰ができたことと制度改正があったからであろう。
 
  電力会社が風力発電の試験研究を行うのは関西電力が九0年に六甲アイランドで実施し,他の電力会社も九五年まで試験研究の設置を行い、実証試験を行うのは九八年の九州電力と沖縄電力からである。九州電力では九0年に電力供給を行うがその後の設置は実証試験であった。まだ本格的電力供給には至っていない。おそらく規制緩和の動向を睨んでの待機であろう。
 
  そこで再び民間企業をみてみよう。九五年に平和観光というゴルフ会社が賣電目的で風力発電所を建設する。もっともその前の年に関東国際高校が施設内電力供給と賣電目的で建設されている。いずれもメーカーはデンマークのミーコン社である。以後余剰電力を含めて賣電を目的とする建設が本格化する。ただしNTT、トヨタ自動車、日立製作所といった大企業は自家用であったり、系統連結試験といった賣電目的でないことが注目される。すなわち電力会社と同様電力業界の規制緩和と国民の風力発電への関心を見守っているのであろう。

  電力協同組合の仕組み

  最初に筆者が本誌で最初に発表したした電力協同組合の構想は現在でどうなったかを復習しておこう。というのは風力発電技術の発展は目覚ましく、電力料金は先に計算した数字よりさらに安くなったからである。
 
  年間電力使用量は四千キロワット時、金額にして十万四千円とする。風力発電の場合、発電所より各家庭へ送電しなければならないが、その費用を生産した電力量で支払うとすると一千キロワット時かかる。そうすると各家庭の必要とする電気量は五千キロワット時になる。
 
  さて現在最新の風力発電機は六00キロワットで一億五千万円かかる。年間平均風速六メートルとして、各家庭への送電可能総量は一,O三九,O六七キロワット時となり、供給可能戸数は二O八戸となり、一戸当たり建設費用は約七三万円となる。これが出資金となる。耐用年数は二O年なので一年当たり三万六千五百円となる。これで一家庭で必要とする電気量は賄えることになる。支払い電気料の三五%ととなる。なお、平均風速が七メートルとなると発電量は倍近くなるので比較では一六%ということになる。但しこの計算では地代を無視して計算しているので、地代を考慮にいれると風力による差額は、差額地代として土地所有者の手にはいり、電力協同組合の収益とはならないということで理論的には三五%が正しい。以上が筆者が構想した、環境にもよく電気料も安くなる電力協同組合の仕組みなのである。
 
 電力会社との関係は風が吹いて電力が発生し、組合員家庭が消費する以上の電力は電力会社に売り、風が吹かないで電力が不足するときは、電力会社よりその不足分を組合単位で購入するといういわば,現在行われている家庭単位の大陽光発電の方式を風力発電に適用すれば協同組合方式で可能となるということである。大陽光発電は電気料に比較して、設備費がまだ高いので普及には國の助成金を必要とする。風力発電協同組合の場合は一戸当たりの設備費はずっと安いので國の助成金を必要としない。 

  規制緩和

  ただしこのような電力協同組合は電気事業法の規制に阻まれて今すぐに設立することはできない。最大の問題は送電線が開放されていないことである。アメリカのいくつかの州やイギリス、身近にはにはNTTのように電線を一般に開放し、送電料を支払えば可能となり、一般家庭を対象とする電力の小売り会社もできよう。現に卸発電の大口には一キロワット四円で自分の事業所なら、全国どこにでも送電できる。もっとも卸売り電側より四円は高すぎるという不満はある。
 
  予定されている電気事業法の改正では、規制緩和措置として、大口の卸売り発電には大口への電力販売を可能とする。ただし、一般家庭といった小口への賣電は電力会社の反撃で規制緩和の対象にしなかった。依然として大口産業優先の姿勢である。それが首相発言となったのである。小口の自由化は日程に登ったのである。
  
 先ず大口の電力事業の自由化について説明しておこう。大口とは事業用のことで工場とか事務所用を指し、使用電力量も一定量以上に限定する。すでに製鉄等の工場では廃熱を利用して発して自家発電として利用していたが、最近その電力を自らの工場事務所にも一キロワット時四円で送電できるようになった。これからの規制緩和で電力会社以外でも本格的に発電事業に取り組み電力を販売することができるようになる。電気事業の自由化である。ただし、販売できる電気量に下限があり大口購買者に限られている。現在事業用は十六円が一応の基準となっているが、競争で低落する可能性がある。それに備えて既存のでんりょく会社はリストラに迫られている。これは風力発電でも同じである。一応見込まれた将来の収入は低下するかもしれない。現在風力発電は既存電力会社が購入義務をもっているが、現在の価格を将来に渡って保証することは困難であろう。
 
 

 
 
  「 電力共同購入事業創設運動の構想」
       〜誰もが自然環境を損なわない電気を選択使用できるために〜

 
                                       クリーンエネルギーフォラム  瀧田隆夫   
 1、状況
 
  1. 年々環境を損なわない電気を要望する人は増加している。
  2. 外国ではグリーン料金制度といって消費者が割増金を負担してクリーンな発電者を金銭的にも援助する電気小売り会社もある。日本ではまだ消費者への小売りは規制  が緩和されていないので不可能である。
  3. 日本の電気料金は電力審議会でも二割は高いと認めている。電力審議会は小売りの規制緩和を答申したがそれは大口の電気料金のみで一般消費者向けの小口は先送りとなった。これは国際的に認められず、本年1月OECDは小口と発電と送配電の分離を日本政府に勧告することとなった。
  4. 規制緩和について小口価格25円と事業用の電気料金16円との格差の理由が解明されていない。

  5.  
 2、電力共同購入事業の採算と対象電源
                                        
  1.   @ 採算(単位kwh)                             
       一般消費者電気料金             25円(消費税込み26円)
       風力発電の電力会社買い入れ価格     11、5円(電力会社により異なる)
       送配電料+ 手数料、利益                4,5円(公開資料なく推定)
                        計               16円
                        差                         9円(電気料金引き下げと買い入れ価格値上げの財源)
 
  1.   A 対象電源      クリーンエネルギーで現在電力会社に売電しているもの 
     仕入れ可能量    風力 6道県、10ケ所   7,050kw(余剰売電を除く)
                        (神奈川、1ケ所,  800kw)                                             
             水力34都道府県市、276ケ所 、 2,477,110kw
                          その他農協等  110ケ所 (詳細不明)
             (神奈川12ケ所、352,750kw)
        
3,効果
  1.   地域内のクリーンエネルギー発電による素性の分かった電気を現行電気料金より安く購入できる。
  2. 自治体民間企業等発電の風水力発電単価を現行より値上げでき、外国のグリーン料金運動と同じ効果が発揮できる。例えば神奈川県では1kwh1円で30億9千万円の増収となる。(年間kwh= kw×24時×365日×1日平均発電時間率)
  3. 1,2 の理由により発電者自信を持ち、売電価格の上昇は発電適地を増加させる。
 
4,運動の見通し
 
  1. 小口の自由化は国際機関、政府も賛成であり、反対しているのは電力会社のみである。にもかかわらず今回自由化できなかったのは、消費者の声が小さかったことによる。この 運動により声が大きくなれば、自由化の時期は早まることが期待できよう。
  2. 売電している自治体、民間企業は価格上昇の可能性があるので協力できよう。とくに財政難に苦しむ自治体の賛同が期待できる。
  3. この事業の対象者は水力のみで60万人、神奈川県のみで9万人程度とみられる。
  4. 当面対象人数、売電効果の多い点から見て 神奈川県から開始する。