原子力発電所を一基作るのにかかる費用はおよそ3000億から4000億円。で、これ
を60年動かすと推進派の試算では1Kwhの電力が5.9円程度で出来るという。だから経済的でお得だというのが彼らの主張であった。
- 3000億円なら、今年でも60万kWの太陽光発電システムを設置で
きる。技術革新と量産効果で機器の価格が年々、低下していて、2010年ぐらいには100万kWほどが可能となると見られる。
だが、待てよ。これには実は入ってない費用がある。電源開発促進税だ。年間4000億円にもなるこの税金は電力会社から供給されるすべての電力に必ず
1kWhに44・5銭、ちょっと減って37.5銭入っている。年間4000kWh電気を使うお宅だと1500円支払っていることになる。で、この費用は発
電原価に算入されていない。
この電源開発促進税は殆どが原発のために用途が指定されている資金である。(政府もそれを認めている)よってこれは1kWhが5.6円に算入すべきコスト
である。その設備容量に応じた負担として考えるならば、電力の設備容量の4分の1ほどなので1kWhあたり1.5円加えると原発の発電原価は7.4円とな
る。発電量に応じてとしても1kWhあたり1.24円で7.14円となる。
7.4円は、LNG火力の発電原価試算値の6.4円を超えてしまっている。勿論、CO2の排出量を目先で減らすなら原発という選択もあるだろうが、今後、
そうした硬直化した電源構成ではなく、変動するがコストの安い風力発電の導入とピーク対応電源としての太陽光を導入することを考えればLNGコンバインド
サイクルのような負荷追従型の電源を導入するほうが合理的である。
- 但し、現時点では6.4円といわれるLNG火力は燃料のLNG価格の高騰で7円以上になっているかもしれない。しかし、原子力に比べれば負荷
追従性の高い電源としてのメリットを考慮に入れれば、核燃料サイクルなどの後年度負担の大きな資本費の大きな電源へ資金を投入するのは、賢明な選択とは考
えられない。
さて、ここで言う発電原価は、発電端という発電所単体での電気を作るための費用だ。でも、私たちの買う電気はこの価格ではない。一般家庭なら平均25円、
大規模電力需要化向けといわれるものでも平均15円だ。このうち家庭用のオール電化の時間帯別の電気料金では夏場はオール電化とすると30円を超えてい
る。実は、これはそのコストを適正に反映させたものなのだ。そうしなければならないほど、夏場は電力企業は追い詰められて来ている。エアコン需要と自由化
の為に・・・。
適正な価格決定をするとされる市場では夏場の需要期には高騰し、夜間や電力需要の少ない時期は安くなるだろう。そして、それは社会の資金が効率的に使われ
る指標となるというのが市場原理だ。
で、適正な社会的なコストを見るならば、それは発電端で見るべきではないのは明らかだろう。何故に、6.9円の原発の電力が、私たちの元に届くのに25円
になるのか・・・。その理由は長距離送電による送電コストが掛かっているからだ。あまり、注目されてはいないが、50万ボルトの高圧送電にかかる費用は
1kmあたり10億円も掛かるのだ。これは高速道路の様なもので、遠隔地に大規模な発電設備をつくるとどうしたって必要になる。大規模な発電所のうち、遠
くに作られているのは原子力発電所や石炭火力発電所などの3K発電所である。不思議なことにガスコンバインドサイクル発電所は都市近接地に作られている。
そして、末端の消費地情報を知らないままで中央給電指令は、周波数のずれを見ながら発電所の起動、出力調整、停止などをコントロールをしている。
一方、私たちは構想する自然エネルギー資源を最大限生かすオンサイト中心の電源を組み合わせる分散型のシステムでは、こうした巨大高圧送電網を強化する無
駄な投資はもはや不必要になる。大容量電力を長距離送る必要はなくなるからだ。
発電名 単価
燃料費 の内訳
原子力 5.9円程度 3割 LNG火力 6.4円程度 6割 石炭火力 6.5円程度 4割
石油火力 10.2円程度 6割 水力 13.6円程度 なし
さて、左の日本の電力の最大の問題である夏の一時期に起こる巨大なピーク負荷変動を解決しつつ自然エネルギーを導入するかを考えてみる。
太陽光発電が高いということを言われるがそれは単体で見ると、1kWあたりのシステム価格は安くても50万円から60万円、NEFの報告で出された一般的
な販売価格から算定した適正な発電原価は47円/kWhぐらいとまだまだ高い。現時点では、これはもう少し下がっているだろうが、まだまだ高いというのは
本当である。
しかし、これが系統に繋がることでその価値は一変する。小さなものでも集まれば大きな力になる。系統に繋がればそれは可能だ。それも、消費地に置かれるな
らば、50万ボルトとかの高圧送電網は不要である。
これまでのシステムは情報通信の分野で大昔のメインフレーム中心の同様の考え方で動いている。それが、今はインターネットという分散型のシステムでそれぞ
れがインテリジェント化することで価値は増大した。勿論、回線の自由化がそれを後押しした。皆さんがもっとも恩恵を受けているのは固定電話の通話料の低下
だ。そして、それは、端末のインテリジェント化=パソコンの価格が下がることで成し遂げられた。それを支えるエネルギー分野で出来ない訳がない。
ただ、電力の分野では独占による既得権益がそれを邪魔している。さらに、物理的なこれまでのすべての交流電源装置が巨大な基準発電所に同期する形での巨大
なシステムが電力の分散型電源の導入を阻んでいる様に見える。しかし、その巨大なシステム自体がほんの夏場の一時期の為に遊休設備となる電源を用意しなけ
ればならないなど非効率であることもまた明らかなのだ。勿論、負荷平準化の為に蓄電のための装置も系統に繋がれる。その代表的なものが巨大な物理電池とし
ての揚水発電だ。
- この揚水発電の関しては筑波大学機能工学系教授の内山氏が「バッテリーは電気をいったん化学エネルギーに
変換します。
そして、また電気に戻します。電力貯蔵技術と呼ばれています。最も商業化が進んでいる電力貯蔵技術は、揚水発電です。夜間の安い電気を使って、ポンプで水
を高い所にある池に、水の位置エネルギーとして蓄える。それを昼間のピーク時に水車を回して発電するのに使います。揚水発電もバッテリーも、発電設備の一
種です。駆動するエネルギー源に夜間電気を利用している発電設備で、電力需要に合わせて設備を確保していることになります。」と原子力文化の2003年7
月号の対談でこう述べている。
ピーク対応電源としては一体、幾らぐらいの価格での買い取りをするなら社会的なコストとして認められるものだろう?
電力の価格は日本の電力企業が独占状態にあるので、正しい指標価格は公表されていないが、これまでに電力自由化の流れの中で一応、市場原理に基づいた合理
的だと考えられる費用から算出された電力料金が出てき始めている。先にも述べたオール電化向けの電気料金体系だ。この場合の電力企業が出しているピーク対
応販売価格は夏場は30円を超え、その他期は27円である。
大事なのはこの30円以上の時期である。この時期にもし、総供給が総需要を賄えなければ・・・。大規模な停電が起こる。この時期に対応する電源にはその分
だけ支払われるべきなのだ。それは幾ら高くても適正に支払われるべきだろう。所謂、本来なら電力企業が負担すべきだとされる分、回避可能原価というもの
だ。
さらにこの時期に大量に流れて系統の劣化を起こさせないという現時点では全く考量されていないメリットもあるのだ。
太陽光発電からの電力に関しては、不安定であるという電力企業や経産省の言い分は正当性を持たない。現実を知らない暴論である。むしろ、そのピーク電源と
しての重要性を認識すべきだろう。曇った日でも最大出力の3分の1ぐらいは電気を作れるのだから・・・。
- 現時点ではこの太陽光発電システムの系統における価値が十分に評価されているとは言い難い。理由は、総設備容量が日本全体では141万kWに
もなっているにも拘らず、余剰電力という扱いをされたために、自家消費分によって供給された電力が正しくカウントできないのである。夏場は高温劣化による
派生電力の低下を見込んでも70万kWほどの出力はあると見られるが、それは正しく評価できないでいるのだ。
当然、初期導入者の設備は系統内においてそれだけの価値を持ち続ける。よって、電力企業を通じて社会は、その総発電量を相当の価格で引き取るべき経済的な
責任を負うべきだと言い得るものだろう。それは、当初に措いては50円/kWh程度であるだろう。また、その導入量が増えるほどにその価格は低下するだろ
う。しかし、当初に設置されたものの経済的な価値は先行設置されたものがその権利を持つことは当然である。それが買い取り価格以下になる場合は、それ以上
の価格で買い取るべき責任は勿論無い。むしろ、その系統における負荷平準化のための費用をその新規参入者が支払うべきものとなうるであろう。
同様の視点で具体的な例として宮崎県の木城町に建設された揚水発電所について分析を行ったものを次のファイルにUPしているので併せてごらん頂きたい。
http://trust.watsystems.net/saga/yousui-taiyoukou.html