最近、家電量販店でもオール電化を前面に打ち出しどこもかしこもオール電化を商売の種
にし始めています。太陽光発電の訪問販売もオール電化を電力料金が安くなりますとセットで勧めてもいます。
その理由は、何処にあるのでしょうか?
実は、これは国のエネルギー政策と密接に関わっているのです。あまり知られてはいませんが、国策としての原子力推進が、私たちの関与できないところで決め
られてしまい、最近、さらにこれまで30%を上限としていた原子力に比率をさらに上げて40%とする「新エネルギー国家戦略」が閣議了解を経てさらに原子
力推進の方向が確固とした国策になっているのです。
ただ、これは日本の特殊な電力需要に起因する電力ピークを抱える電力会社にとっては実に困った事態となりました。国は、さらに他の産業資本の要求にした
がって日本の電力料金をさげさせるために電力の自由化を始めてしまいました。
- この状況は、国内だけしか市場が無い電力企業の裁量によってどうこう出来るものでは有りませんでした。戦後の復興計画で電力は重要な位置を占
めていました。一方、加工貿易で産業資本が外貨を稼ぐしかないというビジネスモデルを国是として他の産業資本は海外へとその市場を求め、結果、日本の円の
価値を高めてしまい、それが見かけ上日本の電力料金を押し上げてしまったのです。
これは地域独占状態で、幾ら費用が掛かろうが、最終的には需要家から回収できる前提で設備投資をしてきた電力企業にとっては、驚天動地の事態でしたでしょ
う。これによって揚水発電所とかピーク対応火力発電所とかが簡単には作れなくなってしまいました。(お馬鹿な電力会社の九州電力だけは宮崎県民の反対を押
し切って
小丸川揚水発電所を設置しています)
この新たな事業環境の中で、24時間動き続ける原子力と言う硬直した電源=不良資産を抱え込んでしまっている電力会社が、安くなれば良いだけと言う視点で
国がすすめている自由化の中で出来ることは設備稼働率を上げことだけでした。その為には、余ってしまう夜間電力を使わせ、ピークを下げてしのいでいくしか
事業を存続させることはできなかったのです。その為に夜間電力を安くして需要を増やし昼間の需要を下げさせ
るため価格を高くするオール電化を進めているのです。
そこにピーク電源として救世主のように現れたのが家庭用などの太陽光発電です。
そして、家庭用太陽光発電は量産効果によりそこそこ価格もさがってきています。さらに環境のためなら損をしてでも貢献したいと言う善意に満ち溢れた人の良
い方々が損するのを承知で購入されたのです。願ったり適ったりです。そこで電力企業はこのピーク電源としての社会的価値に気を付かせずオール電化で便利で
お得と見せかけ設備投資をさせてさらに彼らの設備容量の一部として利用しようとしているのです。
- 電力会社も国も正式には認めていませんが、昨年末での日本での総設備容量は141万kWで夏場のピークを100万kW程度は下げる効果を持つ
ものです。
昨年末に日本の太陽電池メーカーの生産能力は年産126万kWですから、毎年、これが国内に設置されれば日本の電力供給に大きな効果を齎すものとなり得ま
す。4年後の西暦2010年には生産力の増強も計算に入れれば総設備容量は1000万kWとすることも可能でしょう。ただ、どれだけ企業が設備投資をし、
国内で一般の市民がお金を出して設備投資をして設置されるかです。
これまでの価格体系ではとても経済的に引き合わないとされていた家庭用太陽光発電がこの新しい料金体系では、数字にマジックで経済的に10年ほどで引き合
うようにされています。但し、これはガスの契約を一切無くしてその基本料金を使わないからだと言うのもあります。
- ただ、この料金プランを仔細に検討してみるとこれまでの太陽光発電での慣例である売買電同一価格が適用されていないのです。電力企業によれば
加重平均で同一価格であるとしていますが、それならば、時間帯別の料金体系でもそうなっていなければなりませんが、それは既設設置者からの異論が予想され
るために彼らは手をつけていません。
で、「余剰を買ってあげます、夜間をお安くしますよ、経済的です、安全です、クリーンです。そして、何よりも経済的でお得です」と言えば、コンセントの向
こう側の問題に関心のない一般の消費者はそこへ囲い込まれていってしまい。自分たちが生み出している価値に気が付かないままにされてしまうでしょう。
随分、太陽光発電と言うものは市場で買い叩かれているですけど、そのことをちゃんと指摘する専門家は残念ながらこの国にはいませんでした。
- エイモリー・ロビンズが一昨年出した大著の「スモール・イズ・プロフィタブル」で
「冷房需要の多い地域では、日照と電力需要の相関関係が高くなるため、太陽光発電の価値は高くなる」と述べている。また、電中研では91年の段階で既に太
陽光発電が付加平準化に効果を持つことを研究して認めていました。
当然、ここをカバーしている費用は本来ならば、太陽光発電の設備投資費用をだした設置者に支払われるべきものなのでしたが、電力企業も電中研も、資源エネ
庁も口を噤んで敢えて見過ごしてきました。もし、正当に系統における太陽光発電の価値を認めてその設備に対して支払いが行われるならば、海外へその生産量
の3分の2が流失する事態は避けられたでしょう。これを許してしまったことは実に残念です。
何れにしろ、電力供給の仕組みは分散型電源へとシフトしなければならなくなるでしょう。しかし、依然として、この国では原発を国策として巨大な発電所群に
よる実に中央集権的な交流電源システムを墨守しているのです。まるで、第二次世界大戦末期の日本軍のようなものです。海軍では戦艦大和に象徴される大艦巨
砲主義。原油高の神風が吹いてきたので、これ幸いとさらに原発シフトを信仰の域にまで高めようと考えています。
太陽光発電もCIS型のものが米国では今までのものよりも安い価格で作られるようなるようです。いずれ、このままでは日本のシリコン系太陽電池が主力製品
の太陽電池メーカーは競争力を失うかもしれません。これは自業自得でしょうね。
育てるべき国内市場を無視し海外市場のみに活路を見出してしまった付けが出るのです。そして、その時点では既に国内では国家によってごり押しされた原発が
重い負担となることでしょう。
望ましい未来に投資したものがまっとうに評価される制度枠組みをつくらねば、不良資産のみが積み上がっていくのです。
食い潰しの経済に基礎をおく金融資産で、お金を転がすと儲かるのをよしとする方がトップに居座る日銀発行の紙切れが支配する今の経済の仕組みから、本当に
価値のある持続可能なエネルギー供給の生産装置へと資金が投入され、それが生み出す環境負荷の無いエネルギーによって支えられる持続可能な経済社会へとど
うシフトしていくのか・・・。
自然エネルギーの普及とは、本当はそうしたことが未来から私たちに問われてるんじゃないかと思うのです。
※新エネ特措法(RPS法)=自然エネルギー阻止法(リニューアブル・パワー・ストップ法)に関しては下記のファイルを参照のこと