以下は毎日新聞の 堀 雅充 記者が書いたものです。本人の了解を得てここに公開します。(1997/05/01)


  市民の力で電気を生み出し、環境を守ろう


市民が資金を出し合って太陽電池 を使った”市民発電所”をつくる計画が、滋賀県甲賀郡石部町で動き出した。メンテ ナンス会社の屋根に太陽光発電装置を設置。生み出した電気を同社に売却し、代金を 出資者に還元。同社はこの電気を使い、余りを関西電力に売却する仕組み。相次ぐ事 故で原子力発電に対する不安が増す中、消費者自らがクリーンな電気をつくり出す新 たな市民運動として、注目を集めそうだ。

  「いしべに市民共同発電所をつくる会」(会長、村本孝夫・滋賀大教育学部教授 )が4月21日、滋賀県政記者クラブで会見して明らかにした。      

  計画では、1口20万円で出資者を募り、障害者と健常者が一緒に働く石部町の 「なんてん共働サービス」の屋根に、京セラ製の太陽光発電装置を約370万円で設 置。「てんとうむし1号」と名付け、6月に稼働させる。

  太陽電池の容量は4・35キロワットで、年間4千数百キロワット、十数万円分 を発電できる予定。順調に発電を続ければ、出資者には35年前後で還元される計算 になる。「なんてん」側が「つくる会」から買い取るいる電気の単価は、関西電力の 料金と同じ1キロワット時約24円にし、余った電気は関西電力に同額で売却できる ため、「なんてん」側の支払額は従来と同じになる。

  大学教授や市民運動家、公務員ら約60人でつくる「関西で初めての市民発電所 を作る会」(代表世話人、村本教授)が、地球に対する環境負荷を少しでも引き下げ ようと、インターネットのホームページ(http://202.218.225.66:80/trust/)で、ノ ウハウを提案し、石部町で初めて具体化した。

  会見で、村本教授は「現時点では、出資者と屋根の提供者双方に経済的なメリッ トはないが、装置設置のコストをカバーできる。今年12月には京都市で地球温暖化 防止のための気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)が開かれるなど、環 境保全は緊急課題になっており、原子力や化石燃料に頼らない取り組みの第一歩にな りうる」と話し、全国的に同様の運動を広げたい考えを示した。

  屋根を提供する「なんてん」の溝口弘社長は「発電と消費を自分たちでやること で、節電意識が浸透すれば会社にとってもプラスになる。環境問題は福祉と同様、長 いスパンで取り組まざるを得ず、補助金なしでやる開拓者になろうと決意した」と説 明。出資する滋賀県市民オンブズマンの浅井秀明代表は「エネルギー問題をクリーン な電気をつくりながら考えることができる素晴らしい企画」と話した。

  また、計画に賛同する和田武・立命館大教授が、デンマークやドイツで始まって いる太陽光、風力発電への転換の取り組みについて説明。「COP3主催国の日本で も、 環境保全に対する市民参加の視点が重要。今回の取り組みは、政府の制度改革のきっ かけになりうる」と指摘した。

  石部町で発足した会は、出資者以外にも会員を募って、エネルギーに関する勉強 会や会報発行などを行い、市民運動としての輪を広げていく方針。出資はグループで もOK。問い合わせは、なんてん共働サービス(0748・77・5580)へ。

                                       堀  雅充(毎日新聞記者)